耐震診断と防災検証に求められることとは?①耐震診断への誤解

東日本大震災のような大規模災害が契機となり、マンションからも耐震診断の問い合わせや、災害対策としての調査依頼が増えています。いうまでもなく安全はマンションにとって最重要事項のひとつですから、それ自体は良いことなのですが、専門家の感覚からいえば、耐震診断に対する誤解は多いようです。

第一は耐震診断についての誤解です。耐震診断によって、建物が安全になるわけではないという事実の認識が欠けていることがままあります。
耐震診断の結果とは、それぞれのマンションの耐震性を過去の地震被害から確率論的に判断した安全性を数字として明らかにすることです。実は経験を積んだ技術者であれば、建物の構造設計図書(設計図)を見れば、耐震性能の数字は推定できます。耐震診断とは、その推定値を裏付ける作業ということになります。診断には一定の意味がありますが、それによってなんら安全性が改善するわけではありません。大切なのはこの数字が出た結果に対して、どう対応していくかなのです。

診断結果で出てきた数字に対して自分たちはどう対応すべきかを、特に理事会のメンバーは十分検証しなければ意味がありません。たとえば、旧耐震基準により設計された建物であれば、安全基準を満たさないのは当然の結果です。古い設計基準で設計された建物に耐震診断を施しても、現在の基準を満たしている数値が出ることは非常にまれでしょう。しかも、重要なのは安全基準に達しないことがわかったからといっても、ほとんどのマンションでは補強工事を行うことで基準を満たす数値に改善できた事例が少ないという事実です。

重要なポイントを繰り返します。耐震診断の結果、基準を満たしていないという事実が明確化された後に、どう対応していくのかを判断することがもっとも難しいことなのです。これは大規模修繕工事以上の難題ですから、その対応を図りながら理事会をサポートしてくれる専門家の知恵を借りることが必要になってきます。

 

本記事は、貴船美彦著作「マンション管理組合 理事になったら読む本」(幻冬舎2014年)から内容を抜粋して掲載しております。

つづく・・・

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