季節を感じるマンションに見た可能性

2015年のカレンダーも残り2枚となり、朝晩の冷え込みに早くも冬の足音が聞こえてきそうなこの頃、翔設計本社前の銀杏並木も少しずつ色づいて季節の移り変わりを感じています。

プライベートでの出来事になりますが、先日、縁あって茶会にお招きいただき世田谷区の下馬まで足を伸ばしました。こちらが建築に携わっていることをご存知の先方から、「茶室のつくりやしつらいを知識として知っているとしても、知るより大切なのは使われている場そのものを体感することだよ」とご配慮いただいてのことです。ありがたいお話に二つ返事で参加してきました。

不思議だったのが、案内状に記された場所があるマンションだったことです。マンションの敷地内に茶室があるのだろうか?と思いつつ訪れてみると、なんとマンションの1階そのものが茶室になっていたのです。

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後で調べてみるとマンションの上層は賃貸として貸し出されているようでした。マンション居住者の使うメインエントランスとは別に専用の門扉があり、飛び石伝いに日本庭園を通って茶室に至ります。建物の中に庭園と一体となるように露地が設けられており、にじり口のある四畳半茶室にて濃茶、八畳広間にて薄茶が振舞われました。もてなしとしつらいで表現された晩秋の季節感や、倍も広さが違う空間に同じ人数(亭主も含めて11人!)で過ごすひとときは、確かに参加してみないと実感できない類のものでした。それも、本格的に作りこまれた茶室の空間がベースとしてあってこそのものだと感じました。

茶室を利用する方々だけでなく上層に住まう方にとっても、日々美しく整えられ、移ろう季節を感じられる庭園のある生活はかけがえの無いものでしょう。

他にない特徴や長所を生かした建物ほど、その価値は高まるものだと思っていますが、まさにこのマンションはそれを体現していました。世田谷の住宅地の真ん中にある本格的な茶室など、もちろんすべての建物に応用できるものではありません。建物や周辺環境、そのほかの諸条件を活かした一つの事例として、とても興味深かったです。

 

妙深庵では希望される方に呈茶を行っているようです。興味のある方は先方にお問い合わせの上、一度訪れてみてください。

 

妙深庵 http://www.waqua.jp/

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