東京都における特定緊急輸送道路沿道建物の耐震化の制度に伴い耐震診断を行い、現在、耐震補強工事の実施を検討しています。補強計画において100世帯中8世帯に影響が出ますが、この8世帯の内、1世帯でも反対の区分所有者が出た場合、耐震補強工事の実施を断念せざるを得ないのでしょうか?

補強計画がどのようなものなのか、また8世帯への影響の程度や内容にもよりますので一概には言えませんが、一般的な例として次のように考えられます。

まず、一部の区分所有者に対する影響と一言で言ってもケースは様々です。耐震補強工事による影響が、その区分所有者の権利を特別に損なうものかどうか、あるいは区分所有者の受忍限度(じゅにんげんど)を超えるかどうかが要点となるでしょう。
つまり区分所有法で定められている「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべき」場合に該当するかどうかです(区分所有法31条1項)。

例えばその補強工事の部分が1階の店舗区画で、道路側に面したメインの入口が耐震補強工事によって塞がれてしまい店舗としての価値が著しく低くなるなど、有する権利に著しい影響があると考えられる場合と、上階住戸の窓の外に補強材が設けられることで景観が変わる場合などは、分けて考えるべきです。

耐震補強工事を実行し特定緊急輸送道路沿道建物の耐震化が実現するという社会的公益性、大方の区分所有者および居住者の財産と生命を守るというマンション全体の公益性と、一部の区分所有者が被る損失とを比較するときに、例として後述した窓からの景観が損なわれるケースなどは受忍限度の範囲内であると言えるのではないでしょうか。

つまり、必ずしも反対意見があるからといって、耐震補強を断念しなくてはならないわけではありません。

もちろんこうした考え方が出来るからといって、反対意見を頭ごなしに押さえつけるのは得策ではなく、話し合いは必要不可欠です。じゅうぶんな事前説明と合意形成のプロセスが重要です。利害関係のないコンサルタントのような第3者を活用していくとよいでしょう。

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