1回目の大規模修繕工事が、管理組合として初めて全メンバーで臨むビッグイベントになるというケースは、多くのマンションに共通したものでしょう。
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それまでマンション全体にはなかなか意識が向かなかった住民たちを、ひとつの目的のためにまとめられるかどうかが、大規模修繕工事の成否に大きくかかわってくるのです。それは、全員が自分たちの資産を守ることや、共同体として同じ事業を成し遂げることに関心を持つことともいえます。このハードルを越えることで、マンション管理組合は能動的に動き出すはずです。実際、このビッグイベントを利用してマンション共同体というコミュニティを強化できれば、マンションそのものの未来が変わるのです。
つまり、1回目の大規模修繕というこの機会に住民全員を巻き込む仕掛けをつくることこそ、理事会が担うべきもっとも大きな役割です。なぜなら修繕計画や修繕工事だけであれば、設計コンサルタントや工事会社に委託し、請け負わせさえすれば進められますが、管理組合全体を巻き込むことは理事会にしかできないことだからです。その度合いは理事会のエネルギーの掛け方次第となります。
たとえば、理事会がマンションに関してのさまざまなことを知ることからはじめたように、その知識を管理組合全体の知識に波及することができれば、管理組合は相当にレベルアップします。 具体的な一例として、理事会が修繕計画から工事完了まで、なるべくたくさんの情報をマンション全体に発信し、住民の意見の受け皿となる方法などがあります。さらに諮問機関の修繕委員会を設置して技術的な検討を行うようにすることで、理事会はより管理組合に向けた広報活動にエネルギーを割くことが可能になります。
また、多くの居住者に関心を持ってもらうためには、あえて全員が興味を示すような改善工事箇所を計画に盛り込むことも有効です。工事の内容は大掛かりなものである必要はありません。ほんの少しの改善でも十分です。マンションのエントランスであれば壁紙を少しきれいなものにしたり照明をおしゃれなものに変えるなどでも、十分な変化を伝えられ興味を持ってもらうことができます。
本記事は、貴船美彦著作「マンション管理組合 理事になったら読む本」(幻冬舎2014年)から内容を抜粋して掲載しております。
つづく・・・
①関心を持って取り組むが吉
②自分たちのマンションを知って目的を整理する
③大規模修繕工事でマンション共同体を変える
④「大規模修繕工事はいいものだ」という共通体験のために
⑤積立金はなるべく温存する