理事になったら何からはじめればよい?①マンションの全ぼうを理事会メンバーで共有する

理事になったら、管理組合の現状把握からはじめましょう。
それまでは特別な知識もないまま突然理事に就任することも少なくありません。大規模な団地やマンションでは、行ったこともない別の棟や踏み込んだことのない敷地も含め、”全体を把握”と言われても途方に暮れてしまうかもしれませんが、あまり難しく考えずに、まずは敷地と建物の全部を一度くまなく歩いてまわれば良いことです。普段は立ち入ることのない屋上や機械室なども、理事会メンバーで見学することは必須です。その際は管理会社の担当者や、前任の理事にガイドしてもらうことで、敷地と建物の概略は理事会メンバーの共有情報としてインプットされたことになりますから、ひとまずはそこまでで十分だと思います。
次に管理組合の実態を把握する上では理事会の基本情報として次のような事柄を共有することをお薦めします。

1.住民の居住率
マンションは時が経つと、区分所有者が居住せずに賃貸に転用したり、空き家になるケースも増えていきます。マンションの運営管理を担う管理組合の一員が、実際には住んでいないという率が増加すれば、運営管理上や合意形成で難しい側面も発生します。
実態としてマンションに居住する区分所有者の割合はどの程度か、また賃貸や空き家率が高まっているのであれば、今後の対応や外部の区分所有者との情報共有の対策を講じることも必要になります。

2.世帯構成を知る(人数・年齢構成等)
住民の世帯構成や年齢分布の現状を把握することはとても大事なことです。これらは管理組合の今後の方向性に大きく影響するからです。
10年経過すればマンションだけでなく住民も10歳年をとります。新築当初の住民は若い家族世帯ばかりだったのが、数十年経てば徐々に円熟した集団へと変化します。
すでに多くのマンションが抱えている問題のひとつに高齢化があります。また、いまは高齢化に悩んでいないマンションでも、将来的には住民が高齢化するのは避けられません。
管理組合は、高齢者が元気で健康でいられるためにできることや、若い世帯へ住み継がれるような循環の仕組みをつくっていくことで、管理組合は経済的にも人的活力も継続していけることは間違いありません。
マンションの将来を見据えて長期的な方向性を探っていくためにも、管理組合の年齢構成などの実態を理事会内で把握しておく必要があります。

シニア夫婦が並ぶ写真

3.管理費・修繕積立金の実態を知る。
管理組合の資金状態とそのベースとなる管理費や修繕積立金の現状はしっかり確認しておくべき重要ポイントです。管理組合の運営資金のすべては、これらで賄われているのですから、理事会は100%の徴収に努めることが基本です。
たとえば必要な修繕工事を資金不足が理由で行えない、などという事態は未然に防いでいかなくてはなりません。理事のメンバーは、常にそれらの徴収状況を把握しておく必要があります。

4.管理会社は、理事会の負担を軽減できるだけでなく、効率的に理事会の機能を高める助けにもなります。その一方、費用対効果の面でメリットの少ない管理会社利用が問題になるケースも多くみられます。
そこで、実際にどのような業務をどのような条件で管理会社に委託しているかだけでなく、マンション住民が管理会社に対してどのように思っているかといった情報も含め、理事メンバーは共通の認識としておくと良いでしょう。

5.理事会以外の団体や地域との関係
理事会以外にもマンション内にほかの組織が活動していることはよくあります。理事会の諮問機関として複数の専門委員会が組織されている場合や、サークル、クラブ、同好会などを公認している管理組合もあります。
またマンション住民も地域の一員ですから、快適なマンション生活には地域行政はもちろん自治会(町内会)や商店街などとのつながりも大切にし、防災も含め地域づくりに貢献していくことが求められています。
こうした地域活動において、管理組合がマンション管理業務と自治業務を兼ねているマンションと、管理組合とは別に自治会が存在するマンションがあります。あるいは、地域の自治会にマンション住民が含まれているケース、大規模な団地やマンションであればひとつのマンションでひとつの自治会となっているケースもあります。
理事として抑えておくポイントは、自治会の存在の有無や、管理組合と自治会の業務の領域、そして互いの関係性です。これは、地域の習慣や管理組合の歴史のなかでさまざまな状況が存在しますので、特に理事会のメンバーは共通認識を持って対応していくことが必要になります。

 

本記事は、貴船美彦著作「マンション管理組合 理事になったら読む本」(幻冬舎2014年)から内容を抜粋して掲載しております。

つづく・・・

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