理事になったら何からはじめればよい?⑥住民の自主性を育てる

理事会は住民の楽しいマンション生活の実現を目的として管理・運営の仕組みづくりを検討していくものです。そして、理事会の掲げた目的や目標を住民と共有していくことです。
そのために必要なことは「自主性」です。
あるマンションの管理組合では、理事会がある程度の準備を整え、多くの判断を住民の自主性に任せるという運営スタイルを時間をかけて築き上げています。住民もそのことを理解し、そのマンションはいつ訪問してもすがすがしい空気を感じます。
たとえば管理組合は災害時に備えて発電機やトランシーバーを備蓄することや、年に一度か二度あるかもしれない除雪用のスコップを常備しています。理事会はそのことを住民に周知する広報活動を継続的に行っています。実際に停電がおこったり雪が積もったりした際には、住民がすぐに対応しているのだと教えられました。理事がいなくても、その場その場でおのおのが適切に判断したことを処理していくことができる管理組合なのです。

雪が降った街並み

そのマンションの理事長は「全部自分でやるとたいへんだから段取りを整えておいただけです」と話しますが、実はこれが理事会を楽しくやる秘訣のように思いました。
面倒なことを自分がやらなくてはいけないと感じてしまうと苦痛になりますが、「ここまでは整えたのであとはお任せします」と道筋をつくっておけば、住民は自主性をもって行動を起こすことができます。情報共有や一定のルールができていれば、住民も理事会に頼るだけではなく、自分でできることは自分で解決していくようになります。この仕組みが根付けば、次には住民のほうから「こういうことをしたいので、こんなものが欲しい」というような意見が出てくるようになり、管理組合の運営はさらに高度化していくでしょう。

本記事は、貴船美彦著作「マンション管理組合 理事になったら読む本」(幻冬舎2014年)から内容を抜粋して掲載しております。

つづく・・・

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