大規模修繕とおカネのハナシ 〜第3部:長期「改修」計画とおカネのハナシ〜

目次

長期「改修」計画の策定

第2部でお話ししたように、近い将来にマンションストック住戸が激増していくことが確定していて、熾烈を極める中古マンション市場において、選ばれ続けるマンションを目指す必要があります。

また、既存の長期修繕計画に基づく修繕を行っていても、耐久性の維持しか見込まれていないため、社会的欲求に応えることができず、「選ばれない→スラム化のリスク」が高くなってしまいます。

その為、それぞれのマンションで改修検討項目をまとめ、選ばれ続けるマンションを目指し、お住まいの皆様が長く快適に誇らしく暮らせることを目標に、長期改修計画の策定を行う必要があります。

先立つものはおカネ

長期改修計画を策定するにあたり、様々な項目について採択を検討するわけですが、立ちはだかるのはおカネです。修繕積立金の金額設定と積立期間によって、払える工事費用が自ずと決まってくるのですが、少しでも効率的に計画を立てられないものかと思案するところです。

長期改修計画は資金計画との両輪で成立するものですから、必要な工事を計画するだけが長期改修計画ではないのです。修繕積立金は、区分所有者全員から、広く薄く長く集めるものですから、長期間になればそれだけ積立額が増えるのは当然です。なるべく使わないようにしたいと考えるのは自然なことですが、必要なものに使うために積み立てているので、良い計画を立てたいところです。

では、どのような考えで、どのような手法で、良い計画を立てていけば良いのでしょうか。

 

ベースとなる長期修繕計画の実施時期の検討

まず、最も顕著に資金をプールできる方法は、修繕時期の延長です。次回修繕までの期間が長くなれば、当然それだけ積立額は増えます。国交省の提唱する修繕周期は、昔は10年、直近までは12年周期でしたので、多くのマンションが12年周期の長期修繕計画になっています。2021年9月末に国交省から発表された最新の提唱では、12年~15年周期となっており、修繕積立金の目安金額も上がっています。

これは、マンションを長く使っていくことを前提としており、新築時の売主都合等により低く設定されてきた修繕積立金を是正する意味合いも含まれていると思います。昔は、鉄筋コンクリート造のマンションの寿命は60年などと言われていましたが、実際は80年100年を目指せるし、そのためのメンテナンスをきちんとしなければならないことが分かってきています。

そこで、コンクリートの中性化を遅らせるため、外気に晒される部分を保護するようになりました。吹付塗装やタイル貼りの外壁をよく目にすると思います。いずれも過酷な外気からの影響からコンクリートを保護するためのカバーなのですが、どうしてもこのカバーも過酷な外気に晒されていることで劣化してしまいます。塗装であれば薄くなったりヒビが入ったり剥げてしまったり、タイル貼りであれば、タイルが浮いてきたりヒビが入ったり剥がれてしまったりします。そうなると、コンクリートが外気に晒されてしまい、中性化の進行が進んでしまいます。

 

建替えという選択肢について

もう一つの大きな背景として、マンションの建て替えがとても難しいことがあります。大規模修繕工事を重ねてきたものの、老朽化により建替えの議論が出てきても、実際に建替えが実現したケースがとても少ないのが現状です。

国土交通省の調査によると、平成30年度における築40年超のマンションストック戸数は81万戸ありましたが、平成31年4月時点の建替え実績は、わずか19,200戸に留まっており、建替えに進めたマンションは約2%に過ぎない現実があります。

建替えには、「数年単位の移転期間」が発生し仮住居の確保が必要になること、移転に伴う費用(仮住居の家賃+引っ越し代)に加えて建替え費用の大きな負担が発生すること、そして区分所有者・議決権の4/5以上の合意形成が困難であることなど、重い課題を乗り越えなくてはならないので、98%が建替えに進んでいない事実も納得できるのではないでしょうか。

 

資金計画の見直し

つまるところ、マンションはできるだけ長く使っていくことが現在における最善策となるわけです。長く使うためには、新しい人も入ってこなくてはなりません。空き室は修繕積立金不足にもつながり、いずれスラム化へ進んでしまうリスクがあります。いつの時代でも魅力あるマンションである必要があるのです。

そのためには長期改修計画と資金計画が必要ですが、問題なのはおカネです。資金計画を立てる上で、どのような検討項目があるのか、その一例をご紹介します。

まず前提として、最大の効果を得られる修繕時期の延期を検討します。第1部でお話ししたRC造の寿命を延ばすための外壁のカバー(保護)について現状を調査し、次回の大規模修繕工事の適切な時期を年単位で延期します。これを必ず行うことが重要ですが、それと同時に大きな注意が必要です。例えば単純に『12年周期を15年に設定し直す』、というような簡単なものではなく、様々な箇所・設備などの期待耐用年数と劣化具合、時期の延長によるリスクマネジメントを適切に行う必要があります。

よくあるご質問に「15年と18年のどっちが適切なのか?」というような内容があります。それが簡単に応えられれば、専門家は要らないでしょう。どのようなマンションなのか、これまでの資金計画と積立額はどうか、これまでの工事内容と現状はどうか、などなどそれぞれのマンションによって最適解は全て異なります。必要なのは、それらをきちんと検証し、新しい計画を策定できる力のある専門家をパートナーにすることなのです。

 

まとめ

プロによる資金計画の見直しを含めた長期改修計画の策定で、選ばれ続けるマンションを目指しましょう!

翔設計は、古くは歴史的建造物の保存をはじめ、長年にわたり建物の長寿命化をお手伝いしています。マンションにおいても、長く快適に暮らす為、資産価値を向上させるため、選ばれ続けるマンションを目指すため、工事とおカネ、ハードとソフト、トータルで皆様をサポートさせていただいております。

それぞれのマンションによって異なる改修検討項目をまとめ、選ばれ続けるマンションを目指し、お住まいの皆様が長く快適に誇らしく暮らせることを目標に、資金計画の見直しを含めた長期改修計画の策定をお手伝いいたします。

無料相談を受け付けておりますので、些細なことから大きなことまで、何でもご相談ください。

 

  ▶第1部:大規模修繕工事の「基本のキ」 はこちら

  ▶第2部:修繕から「改修」への転換 はこちら

 

長期修繕計画でお悩みの方はこちらをご覧下さい

分譲マンションの長期修繕計画はそのマンションの管理体制の状態を示す指標の1つです。分譲マンションに住むうえで、快適に住めるかどうかを決める重要な要素の1つです。

長期修繕計画にどのような工事をどこまで組み込むか、またきちんと現地を確認し工事時期や概算工事費を定め、できるだけブレのない計画を作成することが重要となります。是非詳細をご覧下さい。

大規模修繕は管理組合にとって、ビッグプロジェクトです。長く快適に暮らし、次世代に住み継ぐために、いかにして建物を管理していくか、という管理組合の意識が求められます。また、タワーマンションは他のマンションとは異なる部分が異なり実際の経験があるかどうかが重要です。お悩みの方はお問合せ下さい、お待ちしております。

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