「直す」だけの大規模修繕では、資産価値を上げる・高めることはできません
マンションの「大規模修繕」と検索すると、「資産価値」という言葉がたくさん出てきます。「大規模修繕」と「資産価値」がセットで語られているページも多くあります
実際、大規模修繕工事とマンションの資産価値は大きく関わっており、長年大規模修繕を行わなかったマンションは売買価格が下がっていき、大規模修繕実施直後のマンションは値段が上がる事例は少なくありません。しかし、大規模修繕をどのように行うのか、何を行うかによってその後の資産価値は大きく変わります。
では大規模修繕で資産価値を上げるためにはどうすれば良いのでしょうか?翔設計のノウハウをお伝えします。
目次
1.マンションの資産価値とは何でしょうか?
マンションを選ぶ基準として3つの”P”があります。皆様も、これらを検討して今のマンションを選ばれたと思います。
- Place 立地(場所のこと 環境、交通なども含む)
- Plan 物件(建物のこと 構造、設備、機能、広さなど)
- Price 価格(値段のこと 売買価格・賃貸家賃、管理費、修繕費なども含む)
資産価値と言えば、”Price=価格”だけをイメージされる方も多いと思いますが、その価格は立地と物件の条件で上下しますので、3つの”P”はそれぞれは密接に関わりあっています。
立地はどうやっても自分で変えることできませんので不動の価値ですが、物件なら手を加えることが可能です。物件をどのように扱えば資産価値を上げていくことができるのでしょうか?
2.そもそも大規模修繕とは何でしょうか?
マンションの物件の価値を維持していくうえで重要なことの1つが大規模修繕工事です。マンションの大規模修繕とは、基本的には屋上防水と外壁の補修を行い、主に鉄筋コンクリート造で作られている躯体の維持と、雨風から守る防水を行うため十数年に1度実施されます。
・躯体表面の塗装やタイルが、きちんと躯体を守っているかどうか?
・内部の鉄筋を守るため、躯体にひび割れなどが無いか?
・雨水の浸入を防ぐため、防水が機能しているか?
などです
大規模修繕となると、仮設足場が立ち仮囲いが張りめぐらされるため、いかにも大がかりな工事をやっているように見えますが、実は大規模修繕工事は建物を守るための最低限の修繕項目であり、大規模修繕工事によって機能性や使用性が高まるものではありません。
3.資産価値を上げる「改良・改善」
建物の経年が進むと、躯体だけでなく、「設備」というハードと、「運用」というソフトもメンテナンスしていかなければなりません。躯体の維持はもちろん、設備と運用の性能も向上してこそ、マンションの性能が上がる=資産価値が向上する、ことに繋がるのです。では、【設備/ハード】と【運用/ソフト】はどのように向上させていけば良いのでしょうか?
国交省では大規模修繕工事において、元の性能に近づけるための「修繕」に加え、社会的劣化や住宅水準の向上のための「改良」をプラスした【改修】の必要性を訴えています。
マンションの資産価値に直結しやすいのは、共用部の性能になります。性能について4つに分類してみると、大規模修繕では右上の躯体の耐久性のみが対象となっていることが分かります。
階段をスロープに変えてバリアフリー化し、安全性・快適性・使用性を上げる
老朽化した給排水管を、より高性能・高耐久なものに更新して、機能性・維持性を上げる
電話線を使ったインターネット回線を高速光回線に更新して、機能性・使用性を上げる
複層ガラスサッシに変えて断熱性を高め、快適性・省エネ性を上げる
ハンズフリーオートロックや宅配ボックスなどエントランスを改修して、美観性・機能性・使用性を上げる
カーシェアやシェアサイクルなどを設置して、収益性・利便性を上げる
これらは一例ですが、このような改良・改善により、耐久性だけでなく使用性・快適性・安全性の向上につながります。修繕だけでなく様々な性能を向上させてこそ、物件の魅力が高まり、資産価値の向上に繋がるのです。
4.「改良・改善」を実現させるには
改良・改善は、老朽化した設備を最新のものに更新するような計画的に取り組めるものと、時代の変化やニーズに対応していくような、計画が立てにくいものの両方があります。
計画できるものについては、修繕費を積み立てていくことで対応することができますが、後者のような計画しにくいものについては、なかなか準備がしにくい=修繕費を積み立てにくい側面があります。
ですから、改良・改善を実行するためには修繕積立金に余裕を作っていく計画性と工事コスト圧縮の努力が必要になります。
実際にはこの改良・改善工事の費用を初期の長期修繕計画に見込んでいるマンションは多くありません。適切な資金計画を立てることはもちろんですが、何より各工事におけるコストの圧縮が資金計画に大きく影響します。
私たち翔設計はマンションの数十年先を見据えた有効的な長期修繕計画の作成を始め、修繕工事における工事コストの圧縮に力を入れて取り組んでいます。修繕に加え改良・改善工事を取り入れ資産価値を向上させ、より長く快適に暮らしていけるマンションを目指しています。
お悩みの方はこちらをご覧下さい
大規模修繕コンサルタントを活用することで、快適なマンションライフのために何が必要で、そのためにはどんな工事・費用が必要かを整理することができます。
その結果、様々な疑問をしっかり解消でき、納得できる修繕計画を実行することができるようになります。是非詳細をご覧下さい。
マンションの劣化は耐久性だけではありません。
それは「機能的劣化」と「社会的劣化」です。
この2つもきちんと対応しないと、耐久性の点では問題は無くとも、今の時代のニーズに合わない不便なマンションとなってしまいます。それは皆さん自身の住みやすさ、あるいは資産価値に直結します。適切な時代適応を行うためにも、ご相談頂くことをお勧め致します。
「物件価値」と「生活価値」
大規模修繕工事によって資産価値を高める改良・改善を考える場合、マンションの資産価値を検証する必要があります。私どもはマンションの価値について理事会の方々にご説明するときに、大きく二つの要素に分けてお話しています。ひとつは「物件価値」、もうひとつは「生活価値」です。
マンションの大規模修繕工事を計画する際、単なる補修だけでなく、資産価値を高める改良・改善も重要な検討事項です。しかし、その前にまず考えるべきは、マンションの資産価値とは何かということです。
マンションの価値を構成する二つの要素
私たちが理事会の方々にご説明する際、マンションの価値を主に二つの要素に分けてお話しします。「物件価値」と「生活価値」です。
「物件価値」は主にハード面の要素で、一般的な資産評価の際に考慮されるものです。これは経年とともに劣化し、価値が下がっていくのが宿命です。そのため、定期的なメンテナンスや計画的な修繕工事が欠かせません。
一方、「生活価値」は主にソフト面の要素で、共同体としての価値と言えるでしょう。これは時間とともに形成され、向上する可能性を秘めています。長年住み慣れたマンションの魅力は、実はこの「生活価値」に大きく支えられているのです。
資産価値向上のための基本戦略
では、大規模修繕工事で資産価値を高めるには、どうすればよいでしょうか。その基本的なセオリーは「長所を伸ばし、短所を隠す」です。
まず、マンションの「長所」、つまり物件価値や生活価値の中にある魅力やコンセプトを見極めます。これらを補強し、伸ばすことで、建物の魅力が増し、費用対効果の高い改良・改善工事が実現できます。
一方、「短所」に関しては、そのマイナス面を十分に理解することから始めます。多くの場合、短所の完全な解消には大きなコストがかかります。そこで、短所を目立たなくしたり、長所でそのマイナス面を補完したりする方法を考えるのが効果的です。
例:郊外マンションの改善アプローチ
例えば、駅から遠い郊外のマンションを考えてみましょう。確かに立地は短所ですが、これは簡単には改善できません。しかし、広い敷地や豊かな自然環境といった長所に目を向けると、新たな可能性が見えてきます。このような場合、優れた環境をさらに活用できるような工事計画を進めることで、資産価値の向上に大きな効果をもたらすことができるのです。
大規模修繕工事は、マンションの未来を左右する重要な機会です。物件価値と生活価値の両面を考慮し、マンション固有の特性を活かした改良・改善を行うことで、住民の皆さまにとってより魅力的で価値のある住まいを実現できるでしょう。