十数年に一度の大規模修繕工事を成功させるために、管理組合理事会や修繕委員会はどのように取り組んでいったらよいのでしょう? 私どもは様々な管理組合さまへのコンサルタント業務を通じて、大規模修繕への取り組み方や大切にしてほしいことを整理しています。 これから大規模修繕工事を計画していく方々にぜひ参考にしていただきたいと思います。
どんな建物も大規模修繕工事をしたからといって新築時の状態に戻ることはできません。 それでも使いこなして愛着がある。気に入っている。なじんでいる。それが住み続けているマンションの価値です。
人と共に長年営みを重ねてきた歳相応の魅力が建物にも兼ね備わるものです。住んでいる人たちが、その価値や魅力を理解してあげることです。過剰に新しさを追い求める必要はありません。
居住者の中には「ずっとこのマンションに住むつもりはない」という方もいらっしゃいます。しかし「暮らし心地」が悪いマンションが売れるはずがありません。マンションを良くしていく大規模修繕工事は、住み続ける人、売却したい人、賃貸転用したい人等、それぞれのご事情に叶った利益をもたらします。
そうであれば、できるだけ大勢の興味と参加意識を高めて、みんなが得する工事を目指しましょう。
理事の方々や修繕委員の方々が楽しくないのに、居住者の皆さんの興味や参加意識が高まるはずがありません。
何を修繕すべきかはマンションを知ることから始まります。そのために専門家による「建物調査診断」がある訳ですが、調査してマンションのすべてがわかる訳ではありません。むしろ建物の基本的な状態がわかる程度だと言ったほうがよいでしょう。
マンションを知るには、居住者さまの気持ちを知ることも大切なのです。日々暮らしている居住者の不安や希望をくみ取り、整理することで修繕工事や加えるべき改良改善工事の優先順位も決まってきます。
管理組合さまの意見をまとめ、多額の修繕積立金を使う工事計画を立て、これを実行していく立場はとても重責です。一部の理事に任せきりでは上手くいきません。また計画途中で人が替わってしまうのも望ましくはありません。計画段階で必要なのは「組織づくり」と「適切なタイムスケジュール」です!
限られた時間で無駄なく計画を遂行していくには、前もって全体のスケジュール化を図ることです。時間がかかりそうならその分早く組織を立ち上げスタートさせることも必要です。 工事計画が進んでいくと意見が分かれることもあります。細かなスケジュールがない場合やスケジュールを重視しない計画は暗礁に乗り上げ停滞してしまいます。「いつまでにこれを決める」というルールを重んじ、一つずつ答えを出して突き進んでいくことです。
大規模修繕も3回目になると、マンションの寿命に関する質問が多くなります。これはお医者さまに「私は何歳まで生きらますかね?」と聞くことと同じで、専門家でも建物の寿命を言い当てることはできません。また建物や設備は修繕をしていけば延命はできますが、管理組合運営が先に衰退化してしまうこともあります。このようにマンションとは「建物」と「人」がバランスして存在しています。
全てのマンションに今の建物の終わりと次にどうするかを決めなくてはならない時がやってきます。管理組合が元気で成熟した運営状態を築いていれば、明るい未来を自分たちで創ることができるでしょう。
築30年40年のマンションでは修繕方針の選択肢は大きく分かれてきます。組合内での意見交換や合意形成に長い時間が必要でありコンサルタントの力量が求められるところです。