大規模修繕工事の原則は?②システムとしてとらえる長期修繕計画

「なぜ定期的に大規模修繕工事を行うのか?」という質問を受けることがあります。
前に挙げた合理性の話とも関連しますが、大規模修繕工事の時期に差しかかっていても各マンションの事情で、本当にその工事が必要かどうか迷うケースがあります。たとえば、修繕工事の予定箇所に該当していても、ここはもう少し先延ばしにしても良さそうだ。こちらは数年前に先行して修繕したばかりだし…などといった理由で、その費用を次の機会に回した方が合理的ではないかと考えてしまうのです。
もちろん、それも一理ありますが、別の観点からいうとその考え方は非常に大きな問題があります。

実はマンションの保全技術は、システム化することで担保されています。細かい部位や分野ごとの耐用年数や仕様を考えすぎることで、結果的により重要で総合的な保全システムを壊してしまう可能性が高まることです。このことこそ、もっとも避けなければならない危険といえます。
工事時期とその内容を特定するということは、修繕を総合的にわかりやすく整理して誰が担当しても間違いの起こらないようにするシステムそのものといえます。そして、このシステムを維持するためには、定期的な大規模修繕工事が必要になってくるのです。

グラフイメージ
シンプルで継続性のある保全システムを維持していくために、目の前の現況のみで判断しないことも重要となってくる。

理事が代替わりを繰り返そうと、その時点での理事にとって分かりやすく、できるだけシンプルな保全システムを継続することが大切です。それにより、結果として継続性のある優れた改修が実現し、経済的な合理性にも合致したものとなる場合がほとんどなのです。
ですから管理組合は、10~20年という単位で見たときにトータルで優れた修繕計画を考えなければなりません。長期修繕計画とは修繕工事をシステム的にまとめたものに他ならないのです。
いい加減な長期修繕計画しかないマンションは、どうしても場当たり的な修繕工事を繰り返してしまい、長期的に見ると多くの無駄を生んでいます。
その点からも、誰にとっても理解しやすい修繕計画を立て、それを次の世代の理事へと伝えていくことが、理事会にとって重要なことといえるのです。



本記事は、貴船美彦著作「マンション管理組合 理事になったら読む本」(幻冬舎2014年)から内容を抜粋して掲載しております。

つづく・・・

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